太平洋戦争のとき、石油生産量は、日本1に対してアメリカ700。日本の2年分の石油をアメリカは半日で生産できてしまう国力差でした。
はい、これがアメリカが日本に勝った理由です。
これではつまらないので、もっと構造に目をやりましょう。
実はアメリカは日本に散々苦戦しており、負けた戦いでも極力、人を無駄死にさせない様にしたり、負けた理由を研究して次の勝ち戦に繋げたり、なかなか勝てない司令官を解任したりをしました。
【マッカーサーを無駄死にさせなかったアメリカ軍】
一番有名なのはマッカーサー。彼はフィリピンの戦いで日本軍に敗れ、責任取って軍の全滅に付き合って戦死するか、自殺するかを考えていました。しかし、当時、アメリカの英雄とされ、なおかつ優秀な司令官であるマッカーサーの死をアメリカ軍は絶対に避けたいと考えてました。
アメリカ軍はマッカーサーをフィリピンから退却させようと説得しますが、頑固なマッカーサーはこれを拒否。色々苦慮した挙句、家族が無事に帰ってくることを願っているということを伝えてようやくマッカーサーの説得に成功し、命からがら、PT-ボートでフィリピンから脱出させることに成功。後に、陸軍を率いて日本を倒すことに成功しました。
【ルンガ沖夜戦での負けを徹底的に研究したアメリカ海軍】
ニューギニア島に孤立する日本陸軍に、物資を補給する日本海軍の艦隊と、それを妨害するために米軍艦隊が激戦を繰り広げたのがルンガ沖夜戦です。
日本海軍は、天才的な提督と呼ばれる田中頼三少将率いる駆逐艦部隊、迎え撃つ米国海軍は重巡、軽巡、そして駆逐艦からなる部隊。重巡や軽巡のような大型艦は駆逐艦より戦闘力が高く、一般的には日本海軍の駆逐艦が全滅させられてもおかしくはない状況でした。
しかし、田中頼三少将率いる駆逐艦部隊は日頃猛特訓を積んでおり、鮮やかな操船技術で損害は駆逐艦高波一隻のみ。一方の米国海軍は巡洋艦部隊が沈没、ないし大破で戦闘不能となり、実質的に全滅に近い被害を被りました。
日本海軍のほぼ完全勝利であり、アメリカは日本の戦い方を非常に高く評価したのに対して、日本側は「本来の陸軍に物資を届ける任務を放棄して戦闘に集中しすぎた」という理由で低く評価。あろうことか、田中頼三少将を後方に追いやり、二度と艦隊の指揮をとらせなくしました。
のちにアメリカは「田中頼三が艦隊指揮をこれ以降取らなかったのはラッキーだった。もし田中頼三が指揮を続けていたらもっと米国艦隊は苦戦したはずだ」、という趣旨のことを回想してます。
アメリカはまた、ルンガ沖野戦の敗戦を研究し、戦い方を見直すことにしました。ルンガ沖、という場所は狭い海峡であり、そこに巡洋艦のような大型艦艇を配置しても、長所である射程の長い大口径艦砲が有効に使えないばかりか、身動きができずに的になるだけであった、という結論に達します。
そこで、これ以降はこの地域にはPT-ボートという小型、高速、重武装の魚雷艇を大量に配置。これならば狭い海峡でも機動力を生かして日本の海上輸送を妨害できるし、仮に沈められても巡洋艦の撃沈のような大きな痛手とはならない、という実に合理的な戦い方ができるようになり、日本の南方作戦を断念させる大きなきっかけとなりました。
ルンガ沖夜戦そのものは日本軍の圧勝でしたが、その後のストーリー的には日本軍のダメすぎる人事と、米国軍の優秀な戦術見直しで、形勢逆転されてしまってます。
【効果的なB29の空襲】
実は初期のB29の日本本土空襲はなかなか効果が上がらず、米国陸軍(当時はまだ空軍としては独立してない時代)は苦慮してました。
初期のB29の運用方法は高高度からの軍需工場や基地を狙ったピンポイント爆撃を行っており、民間人を狙った空襲はほとんど行われてませんでした。
高高度爆撃だと爆弾は気流に流され、狙った場所になかなか命中しないので、攻撃目標は無傷のこともある一方、B29は空襲のたびに、数機を失い、イメージとしては駆逐艦一隻分近いコストが掛かる、という有様でした。
そこで、米国陸軍はこの戦略爆撃の司令官を解任し、新たにカーチス・ルメイを司令官に据えます。
カーチス・ルメイはそれまでの高高度、ピンポイント爆撃をすぐさま中止し、代わりに夜間、3000メートルくらいの高度から、無差別に大量の焼夷弾を日本のあらゆる都市にばら撒いて焼き払う、という作戦に切り替えました。爆弾を一発でも多く積むために、B29の機関銃すら降ろす、という徹底ぶりでした。
当然、あまりにも無謀すぎるという意見や、民間人を殺戮することに対する反対意見も米国陸軍内から上がりましたが、カーチス・ルメイは構わずに実行。日本に甚大なる被害を与えて日本の敗戦のきっかけの一つとなりました。また、低空飛行や非武装化によって懸念されたB29の被害も、実際は日本の被害に対する失うB29の数、つまりキルレシオは大幅に改善し、実質的にB29の機体や搭乗員の損失を減らすことにもつながったのです。
日本の教育では「B29の空襲は残酷で恐ろしい」、もっと歴史に踏み込んで勉強した人でも「鬼畜カーチス・ルメイ」、「カーチス・ルメイに勲章を与えるのは間違っている」という道徳教育で終わってしまっているのが残念です。もっと構造的に「カーチス・ルメイをB29を運用する司令官として任命できるアメリカは、確かに戦争で強い国なんだな」、というところまで国民の1割でもいいから気付いて欲しい、と思ってしまいます。
ちなみに太平洋戦争時の日本はこういう大局を左右する人事は年功序列のメンツ重視人事しかできず、硬直化を招きました。局地の司令官や中央作戦本部にも堀栄三のような優秀な人は居ましたが、どれも冷遇されたりして、きちんと活用できてません。恐らく今の日本も相変わらず人事は下手なので戦争が起きたら同様の結末となるでしょう。
面子を重視し、失敗を隠し、優秀な人を正しく評価せず、一度成功した方法を繰り返して徐々に対策されて損失のほうが大きくなる日本。
合理性を重視し、失敗を研究し、優秀な人を正しく評価し、失敗した方法があれば成功する方法を考えて徐々に勝ち筋を見つけるアメリカ。
石油の生産量が700倍あったとしても、当時の日本はアメリカに勝つのは構造的にできなかったことでしょうね。